念願の消防士になったのになんだか幸せだと思えない。上司の顔色を伺って仕事をするのに疲れる。部下が反抗的で気に入らない。
こんなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
心理学者アルフレッド・アドラーは「すべての悩みの原因は対人関係にある」と定義しました。
組織で働く以上対人関係から逃れることはできず、それに大きな心理的負担を感じる。
これは誰もが経験することでしょう。しかし、対人関係は悩みの源泉ではあるが、生きる喜びや幸せもまた対人関係の中にあるのです。
あなたが組織の対人関係で幸福感を得る方法は「自立」と「人生のタスク」を理解し幸せになる勇気を実践すること。
この記事では人間関係が生きる喜びに変わる幸せになる勇気について解説します。
・救急救命士に必要な幸せになる勇気
・自立と人生のタスクの活用方法
・救急救命士エピソード紹介

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
パワハラやモラハラなど様々なハラスメントが問題化し、人と人との距離が複雑になった現代。
組織の中で働きがいや喜びを感じることは益々難しくなっています。
しかし、人間は太古の昔から対人関係の中に幸せを見いだしてきたことも事実。
今回の記事では人間関係の中で喜びを得るための幸せになる勇気についてご紹介します。
目次

夢だった消防士となり念願だった救急救命士として命を救う現場で働いていても、なんだか心が満たされない。
そういう人は対人関係における負のループにハマっている可能性があります。
せっかく夢を叶えたのに理想の自分とかけ離れた現実に絶望し、退職してしまう若手も少なくありません。
対人関係の中で幸福感を得る方法を解説したのが岸見一郎さんの「幸せになる勇気」です。
前作「嫌われる勇気」がアドラー心理学を学ぶ上での地図であるなら、「幸せになる勇気」は道を指し示すコンパスであると岸見さんは語っています。
勇気の2部作の前編。対人関係の悩みを解決する「嫌われる勇気」の内容を知りたい方はこちらをご覧ください。

幸せになる勇気ではアドラー心理学の5つのポイントを解説しています。
①自立のスタートは相互の尊敬
②賞罰を否定し問題行動を理解する
③競争原理から共力原理へのシフト
④与えよ、さらば与えられん
⑤愛する人生を選べ
この5つのポイントを理解し実践できればあなたのつらかった人間関係や仕事が喜びに変わるでしょう。
なぜならこれらがアドラー心理学のゴールである「共同体感覚」へと導くコンパスになってくれるからです。
できない自分に自己嫌悪、心ないアイツが許せない、保守的な組織にやりがいを見いだせない。
これらの悩みの多くは「自立」と「人生のタスク」をクリアすることにより解決することができます。
それには利己から脱却し共同体感覚を身につける幸せになる勇気が必要なのです。


今回は幸せになる勇気か!
嫌われる勇気もそうだけど、今回も難しそう(泣)


嫌われる勇気を勉強したきずなならきっと大丈夫!
それに幸せになる勇気の話は、教師と生徒の関係がベースになっているから、
理解しやすいと思う。
自立の鍵は尊敬を示すこと


アドラーは人を育てるゴールは「自立」だと定義しました。そして自立させるためには「尊敬」が欠かせないのです。
上司は部下を育てることが仕事です。消防では上司が部下を叱ったり指摘することで人材を育成していますよね。
しかし、幸せになる勇気では叱ることは言葉の暴力であり、人間として最も幼稚なコミュニケーションと真っ向から否定します。
叱ることは相手を自立させる上で大きな弊害になってしまうからです。
それではどのように教育すればいいのか?その答えは共感を示し他者の関心事に関心を寄せること。
・他者の目で見る
・他者の耳で聞く
・他者の心で感じる
後輩や部下であっても相手の立場に立ち尊重し共感すること。これが自立へ導く唯一の方法なのです。
こちらが相手を尊敬しボールを投げても、相手が尊敬のボールを投げ返してくれないこともあるでしょう。
でもそれは対人関係では仕方が無いことなのです。「悪いあの人」「可哀想な私」ではなく「これからどうするか」がポイントだとアドラーは示しています。
人を育てる立場の方は是非、勇気を持って尊敬のボールを投げ続けてください。そうすればきっといずれ相手も尊敬のボールを投げ返してくれることでしょう。
この関係構築こそが人間関係が喜びに変わる第一歩なのです。
賞罰と問題行動を理解する


賞罰ではお互いを敵と見なす競争原理が働きます。仕事で喜びを得るためには他者を信頼し尊敬する協力原理にシフトすることが重要になります。
アドラー心理学では「褒めること」「叱ること」を明確に否定します。
なぜなら褒めることや叱ることは立場が上の人間が下の人間を評価する形になってしまうから。
上下の関係では対人関係のゴールである共同感覚を得ることができません。
そして叱ることの弊害として5つの問題行動があることを理解しておきましょう。
①称賛の要求
称賛を得るために上司や先輩に対してやる気をアピールする。
②注意喚起
注目を集めるために突拍子も無いことや迷惑な行為を行う。
③権力争い
自分の力を誇示するために相手を無視したり挑発を繰り返す。
④復讐
権力争いに敗れた場合は相手に対して復習を画策する。自傷行為などもこれに含まれる。
⑤無能の証明
自分が価値のない人間だと思い込みすべてに対して無気力になる。
幸せになる勇気では③を超えると当事者間では解決できない状況になると説明しています。
④⑤レベルは専門家の介入が必要となり、部署移動や退職でしか解決のできない問題となってしまうので特に注意してください。


ここ数年若手救急救命士の離職率は大きく上がっています。5つの問題行動はそのサインです。
子供の頃から叱られ慣れていない彼らが環境の変化に戸惑い、モチベーションを失って夢であった救急救命士の仕事を諦める。これは本当に残念なことです。
対人関係において過度の叱責は相手の自立を妨げお互いの幸福感を下げる。
人間関係を喜びに変えるにはお互いを尊重するWIW-WINの関係を目指しましょう。


5つの問題行動かぁ。
確かに一方的に叱られたらやり返したい気持ちになっちゃうかも?


実はパパも今の職場でこの問題行動を経験した事があるんだ。
人間関係が上手くいかなくて反抗的な態度を取っていた人がいたんだけど、
最後には誰の言うことも聞かなくなって辞めてしまったよ。
与えよ、さらば与えられん
人間関係で幸福感を得る1番の方法は誰かに対して貢献し感謝されることです。
人間は誰かに感謝されるとセロトニンというホルモンが分泌され喜びや幸せを感じる事が分かっています。
これはギャンブルや衝動買いなどで分泌される快楽物質ドーパミンより持続時間が長く幸福感も大きい。
幸せになる勇気ではこれを「与えよ、さらば与えられん」という言葉で表し、人生のタスクについて語っています。
①仕事のタスク
条件付きの信用、あなたの存在ではなく機能を評価される(GIVE&TAKE)
②交友のタスク
無条件に相手のことを信頼すること(GIVE&GIVE)
③愛のタスク
人生の主語を私から私たちに変えること(共同体感覚)
幸せになる勇気とは仕事のタスクである条件付きの信用から、無条件の信頼に人生のタスクを変化させること。
そして最終的には愛のタスクを経て共同体感覚を得ることです。


人生の主語を私から私たちに変えること、これを「自己中心性からの脱却」といい、それが本当の意味の自立に繋がるのです。
対人関係が上手くいかないこと、相手に対してイライラしてしまうこともあるでしょう。
でもそこで諦めず尊敬というボールを投げ続けてください。そうすればきっと相手も返してくれるはずです。
GIVE&TAKEについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。




人生の3つのタスクか。
条件付きの信用じゃなくて無条件の信頼。
僕もお友達のことを信頼したいから自分からボールを投げるよ!


与えよ、さらば与えられんって素晴らしい言葉だよね。
人間には返報性の原則があるから、きずなのボールはきっと返ってくるよ!


ここまで幸せになる勇気の根幹となる「自立」と「人生のタスク」について解説してきました。
嫌われる勇気で語られる「課題の分離」「共同体感覚」を身につけるにはこの2つを理解して実践する必要があります。
そして人生のタスクを仕事のタスクから交友のタスクへシフトさせ。愛のタスクによりアドラー心理学のゴールである共同体感覚を得るのです。
そうすればあなたは対人関係の悩みから解放されると同時にその瞬間から幸せになれるのです。
それでは救急救命士の自立と人生のタスクの活用方法について見ていきましょう。
自立の活用方法
自立とは自己中心性からの脱却。他者を尊重して共感することで自立に導く事ができます。
国家試験に合格して救急救命士を名乗っても、それはまだ赤子と一緒。
多くの先輩、関係者の協力や現場経験を積むことにより、救急救命士として成熟し自立していく。
その過程で他者への尊敬や共感を身につける事ができれば、あなたは多くの人々から愛され人間関係が喜びへと変わるでしょう。
それでは消防の人材育成を例に「自立」について確認してみましょう。


先輩さんのご指導のおかげで最近は救急活動にもなれて視野が広くなった気がします。
後輩もできたので責任感を持って指導もしていかなきゃ!!


最近の後輩くんはスキルはもちろんだけど、いろんな事に気がつくし成長を感じるよ。
どうやって後輩達を指導していくのか教えてくれるかい?


はい。新人の頃は先輩達によく叱られて心がすさんでしまっていたので、
後輩達には同じ目線で接してあげたいと考えています。


消防では珍しい考え方だけど凄くいいと思うよ。
相手を尊敬し共感してあげられれば後輩達の成長も早いと思う。


ありがとうございます。
先輩さんが僕にしてくれたように相手を尊重したコミュニケーションをとっていきますね!!
この例では先輩さんの指導により後輩くんは自己中心性から脱却し、立派に自立を果たしています。
これは先輩さんが日々後輩くんに対して尊敬のボールを投げ続けたからに他なりません。
自立を果たした後輩くんは後輩達との関係性の中でもそれを発揮し仕事にやりがいや喜びをみいだしていくことでしょう。
消防組織では人間関係のトラブルやストレスは絶えませんが、それでも対人関係の中に幸せや喜びがあることを忘れてはいけません。
「他者の目で見て、他者の耳で聞き、他者の心で感じる」是非この共感の3要素を実践してみてください。
人生のタスクの活用方法
幸福感を得るには人生の3つのタスクである「仕事」「交友」そして「愛」これらの課題をクリアしていくことが重要です。
条件付きの信用は相手が自分の意に反した場合もろくも崩れ去ります。しかし、信頼は揺るぎません。
人間はその弱さ故に団結し、強い動物に挑んだり農耕を発展させることで繁栄してきました。
現代でもそうやって社会は回っています。
信用では無く信頼で繋がる社会。私ではなく私たちが主語の世界。これがアドラーが求めた共同体感覚なのです。
それでは救急活動を例に「人生のタスク」について確認してみましょう。


ばあさんが慌てて救急車を呼んじまったがわしは絶対に病院なんか行かない。
救急隊は早く帰れ!!


亀吉さんのお気持ちは非常によくわかります。
しかし、救命士として観察した結果、心疾患疑いで病院での処置が必要だと判断しました。


お前のような若造にわしの何がわかる!
自分の体のことは自分が一番理解している。搬送は必要ない。


確かに私はまだ経験が浅く未熟かも知れません。
でもあなたを心配し救急車を呼んでくれた奥様の気持ちならよくわかります。


なに!!う~ん、わかった。
そこまで考えてくれるあんたを信頼して病院に行くことにするよ。
ばあさんを一人にするわけにはいかんからな。
この例では当初頑なに搬送を拒んでいた亀吉さんでしたが、後輩くんが相手の気持ちに寄り添った対応をすることで最終的には信頼を勝ち取ることができました。
この会話によって後輩くんは相手の立場に立ち尊敬のボールを投げ続ける大切さを知ったのです。
仕事のタスクから交友のタスクへ歩みを進めた彼は今後、傷病者の命だけではなく心も救う救急救命士になっていくことでしょう。
消防の仕事は時には仲間に命を預けることもあるリスクの高い仕事です。そこには相互の信頼が絶対条件。
対人関係に悩んでいる方は、是非一歩踏み出して人生のタスクを進めてみてください。


救急救命士さんて傷病者の体だけじゃなく心までケアする必要があるんだね。
本当に凄い仕事だな!!


そうだね。知識やスキルだけじゃ人は救えない。
救急救命士には高い倫理観と他者の立場に立つ優しさが必要だよね。


嫌われる勇気と幸せになる勇気。この勇気の二部作はアドラー心理学を理解する上での「地図」と「コンパス」です。
書籍の中で哲人は青年にアドラー心理学を理解するには数十年の月日がかかるとアドバイスしています。
私自身も最初はこの難解な哲学が全く理解できず苦労しましたが、思い返してみると幸せになる勇気に書かれている内容を過去に経験していたことに気がつきました。
対人関係の悩みから問題行動を起こした後輩を一人の先輩が共感と尊敬によって自立へと導いたお話です。
今回は私が経験したエピソードをQ&A形式でご紹介します。
- どのような状況だったか教えて
- 消防士になって数年が経ちある後輩が入ってきました。彼は頭が切れどんな仕事もオールマイティーにこなす期待の新人。しかし、プライドが高く周りの意見に耳を貸さなかったり感情的に反論したりするような部分もあり、俗に言う扱いにくい後輩でした。その態度を何度も周りの先輩達に叱られる中で彼は対人関係の悩みから遂に問題行動を始めたのです。
- どのような問題行動だったの?
- 最初は称賛の要求からことあるごとに自分の優秀さをアピールしていたのですが、それが周囲から認められないとわかってからは、注意喚起の段階に入り突拍子もない話や空気を読まない態度を取るようになりました。そして、最後は権力争いへとシフトしていき職場内でトラブルが絶えない問題児になってしまったのです。
- 最終的にはどうなったの?
- 幸い直属の上司が非常にできた人で、問題児と化した彼と真摯に向き合い尊敬のボールを投げ続けることで信頼関係を築き、その上司の働きかけもあり周囲とも徐々に上手く接することができるようになりました。そんな彼も今ではすっかり自立を果たし頼れる救急隊長として日々住民の命を救い、後輩達を熱心に育成しているそうです。
対人関係の悩みから問題行動に発展し、交友のタスクを経て自立を果たした事例。
彼を救ったのは一人の先輩の心ある行動でした。私もその先輩のように他者の目で見て、耳で聞いて、心を感じられるようになりたいです。


その後輩さん、いい上司に巡り会えて本当に良かったね。
僕も問題行動を起こさないよう気を付けなくっちゃ!


今回の事例は問題行動の第三段階で止められたけど、
これが復讐や無能の証明まで行ってしまうともうどうしようもない。
ここ最近、若手の離職が相次いでいるのはこの辺が関係しているのかもね。
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・すべての悩みは対人関係にあるが、幸せや生きる喜びも対人関係にある
・人を育てるゴールは自立にあり、自立とは自己中心性からの脱却である
・幸せになるためには相手を無条件で信頼することが重要である
今回ご紹介した幸せになる勇気を実践すれば、あなたは自分だけではなく周囲をも幸せにすることができます。
それには「自立」と「人生のタスク」について理解し、今までの考えを変える必要があるでしょう。
幸せになる勇気の中で哲人は愛するということに動揺する青年に向かって、次のようなことを伝えます。
人生の主語を「私」から「私たち」に変える。すなわち人を愛することを恐れないことが重要である。
この愛することを恐れない姿勢こそが幸せになる勇気なのです。
さあ、勇気を持って仲間や周囲を愛しましょう。そうすれば今までつらかった人間関係はあなたの喜びに変わるはずです。


人間関係が喜びに変わる幸せになる勇気。
今回ご紹介した自立と人生のタスクをしっかり理解し
仕事のやりがいや人間関係で喜びを得るために幸せになる勇気を持ってください。
救急救命士のことをまとめているこちらの記事も是非ご覧ください。
5つの問題行動、自分には特に当てはまらないと思いますが、こういう人は居ますよね?これはサイクルとして、くるくる回るのかっていうところが疑問でした。
コウさん
コメントありがとうございます。
私も何度もこの問題行動を目にしています。
5つの問題行動はサイクルではなく称賛の要求から無能の証明に順番に進んでいくイメージですね。