人が思ったように動いてくれない、なぜか自分の思い通りに物事が進まない、自分は先輩の言う通りにやってきたのに後輩が言うことを聞いてくれない。
こんなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
救急のような一分一秒を争う現場で働く救急救命士にとって人を動かす力は必須です。
近年、先輩後輩とのコミュニケーションのあり方が変化してきており、それに適応できないと悩む声を多く耳にするようになりました。
時代が変わればコミュニケーションのルールも変わる。残念ながらこれが事実。
その解決方法はずばり時代が変わっても不変である「人を動かす原則」を学び実践することです。
この記事では人に好かれ愛されることで相手を自発的に動かす方法について解説します。
・救急救命士に必要な人を動かす原則
・人を動かす3原則の活用方法
・救急救命士エピソード紹介

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
現在は年上部下を多く抱えるチームリーダーをしています。
人はそれぞれ自分の正義を持っているので、自分の価値観を押しつけても動きません。
逆にこのコミュニケーションが複雑化した時代に人を動かすことができればそれはあなたの大きな武器になるはず。
今回の記事では誰もが求める人を動かす方法についてご紹介します。
目次

消防という組織の中、救急隊というチームで働く救急救命士にとって人を動かす力は必須スキルです。
しかし、多くの場合は職位や年齢などで強制的に人を動かしているのが現状。
相手が心からあなたを尊敬し、自発的に動いてくれればこんなに嬉しいことはありませんよね。
それには日々のコミュニケーションを変える必要があります。
自己啓発の元祖と言われるデール・カーネギーは著書『人を動かす』の中でこんな言葉を残しています。
人を熱烈に動かそうと思ったら、相手の言い分を熱心に聞かなければならない。
人を動かすには、相手の欲しがっているものを与えるのが、唯一の方法である。
引用:人を動かす
高圧的な態度やポジションパワーで強制的に相手を動かすことは可能です。
しかしそれは真の意味で人を動かしたことになるのでしょうか?
人を動かすとは、まずはあなたが相手に与え、その結果として相手が自発的に自分の頭で考えて行動する事です。
そうすることができれば組織やチームの能力は向上し、自分から与える事のできるあなたは人から好かれ愛される救急救命士になれるでしょう。

人を動かすか、確かに怖い先生に怒鳴られたらその時は言うことを聞くけど、
嫌な思いをした記憶だけが残って余計動けなくなるかも。

怖い思いをしたら誰だって萎縮しちゃうよ。
力ではなく人望によって人を動かせるようになりたいよね。
人を動かす3原則
生まれながらのリーダー気質やカリスマ性を持ち合わせていなくても人を動かすことは可能です。
それは人間には年齢、性別、国籍問わず共通する心理があるから。
デール・カーネギーは著書「人を動かす」の中で人間関係にまつわる30の原則を紹介しています。
その中でも1番重要なのがこの「人を動かす3原則」です。
・盗人にも五分の理を認める
ポイント:相手にも自分の正義がある。それを批判も非難もせず、苦情も言わない
・重要感を持たせる
ポイント:相手の存在を承認して率直で誠実な評価を与える
・人の立場に身を置く
ポイント:相手の立場に立って考え、強い欲求を起こさせる
救急活動や事務仕事で後輩がミスした場合、先輩は必ずと言っていいほどそのミスを指摘して叱ります。
それ自体は悪いことではなく、後輩の成長の一助になるでしょう。
しかし、それをやり過ぎると相手は萎縮して自分の頭で考え行動する事を止めてしまいます。
そうならないよう、ミスした原因をしっかり聴いて感情ではなく事実に対する誠実なフィードバックを与え、相手に自己重要感持たせる事が大切です。
そんな対応ができれば相手は自分を尊重してくれるあなたを尊敬し、自発的に動ける人材へと育っていくでしょう。
人に好かれる6原則

人に好かれ愛される人は自分だけではなく相手も幸福にできる人です。
人間には「返報性の原則」があり与えられれば返したくなる生き物。
普段から人に好かれる行動ができていれば、相手はあなたに好感を持ち望むように動いてくれるでしょう。
それでは「人に好かれる6原則」をご紹介します。
・誠実な関心を寄せる
・笑顔を忘れない
・名前を覚える
・聞き手に回る
・関心のありかを見抜く
・心からほめる
これら6原則に共通することは人を動かす3原則の1つである「人の立場に身を置く」ことです。
すなわち自分ファーストではなく相手ファースト。利己ではなく利他の精神を持っている人は人から好かれます。
救急救命士は傷病者の立場に立ってその時にできるベストな処置や判断をする利他の職業。
だから社会的に信用度が高く地域住民に愛されるのです。
是非、救急現場だけではなく同僚や部下に対しても誠実な関心を持ち、しっかり話を聴いて褒めてあげてください。
そうすれば相手はきっとあなたにも同じように好意を返してくれます。それが人を動かすということなのです。

確かにいつもニコニコして僕のお話を聞いて褒めてくれる人って大好き!!
パパもこの6つの原則を普段から意識しているの?

そうだね。人に好かれる人になれば大抵のことは上手くいくと思う。
実は昔から人の名前を覚えるのがとても苦手なんだけど、
この原則を知ってからはいろいろ工夫して覚えるようにしているよ!
返報性の原則の詳細を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

やってみせ、言って聞かせて、させてみて


消防のような縦社会では規律が重要。甘い顔ばかりしていると部下がつけ上がる。そんな風に思う人も多いでしょう。
実は第二次世界大戦中の日本軍の中で「人を動かす」ことに注力し、部下達に尊敬され愛された軍人がいました。
その人の名前は「山本五十六」日本海軍の連合艦隊司令長官を務めた人物です。
彼は自身の人を動かすための考え方を次のような言葉で書き残しています。


この言葉を読んだ方はデール・カーネギーが示す人を動かす原則との共通点の多さに驚くはずです。
国や時代が違っても人を動かすことの本質は同じ。
特に「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」は消防のような上下関係が厳しい組織でも十分通用する考え方です。
先人の素晴らしい教えに思いをはせながら、この日本版「人を動かす原則」を救急活動や訓練に取り入れてください。


軍隊ってなんだか怖いイメージだったけど、こんな風に考えている人もいたんだね。
褒めるや承認、感謝なんかの言葉がたくさん入ってて驚いたよ。


パパが今の仕事について救急救護の技術を他のメンバーに教える時、
この山本五十六の名言を参考にしたんだ。
自信を持ってオススメできる人を動かすメソッドだよ。


ここまでデール・カーネギー、山本五十六を例に日米の人を動かす方法をご紹介してきました。
両者に共通しているのは相手を尊重することではないでしょうか?
やはり人を動かすにはまず自分が相手に感心を向け誠実な対応をすることがスタートなのです。
人間には強い承認欲求がありこれを満たしてくれる人に好感を抱きます。


図はマズローの5大欲求といわれる人間心理を表した階層です。
上に行くほど高次の欲求とされており、人を動かすポイントは第4階層「承認欲求」にフォーカスすること。
承認欲求が満たされ自己実現欲求に向かう過程で結果として人は動いてくれるのです。
相手の話をしっかり聴き、認め、質問によってより良い行動に導くコーチングも人を自発的に動かす上でとても有効なので、こちらの記事も是非合わせてご覧ください。


人を動かす3原則の活用方法
人を動かすには批判しない、自己重要感を持たせる、相手の立場にたって物事を考えることが大切です。
同僚のミスにイライラすることもあるでしょう。救急現場で思うように動かない部下を怒鳴りつけたくなることもあるでしょう。
でも組織としてチームとして良い結果を得たいのなら、その気持ちを抑えこの3原則通りの行動することが必要です。
そうすることで結果的に周囲のモチベーションが高まり、効率化や質の高い救急活動が可能になるのです。
それでは救急活動における人を動かす3原則を確認してみましょう。


先輩さん、先ほどの救急活動では指示通りに動けず申し訳ありませんでした。
特定行為の手技に集中しすぎて視野が狭くなっていました。


急変で心肺停止になるという対応が難しい現場だったから謝らなくていいよ。
それに救急救命士としての後輩くんの知識やスキルにはいつも助けられているしね。
どうすれば特定行為中でももっと視野を広げて活動できると思う?


優しい言葉をかけていただき嬉しいです。
僕は静脈路確保が苦手なのでたくさん訓練をすればもっと冷静に現場で活動できると思います。


自分で課題に気がついてえらいね。
じゃあ、消防署に返ったら早速救急訓練をして次の出動に備えよう!


わかりました。すぐに訓練の準備をします!!
この例では先輩さんは救急活動で上手く動けなかった後輩くんを批判したり叱ることなく、人を動かす3原則に則って次に繋がるアクションを引き出しました。
相手を承認しつつ上手くいかなかった原因を質問することによって気づきを与えたのです。
先輩さんの寛大で優しい対応により後輩くんのモチベーションは高まり、進んで訓練を直訴しています。
自ら動いたことで後輩くんのスキルは向上し、救急隊としてのレベルも上がることでしょう。
人に好かれる6原則の活用方法
人に好かれることができればあなたの望みが叶う可能性は大きく向上します。
それは人間は感情の動物だからです。誰でも嫌いな人の頼みより、好きな人の頼みを聞きたくなりますよね。
人に好かれるには誠実な態度で接すること。しっかりと話に耳を傾け心から褒めて相手を承認することが必要です。
そうすれば相手はあなたに好意を抱き、好意の返報性として自発的に動いてくれることでしょう。
それでは医療系セミナーにおける人に好かれる6原則を確認してみましょう。


後輩くん久しぶり。今日はセミナー受講ありがとう、1日よろしくね!!
今回のセミナーを受講する上で後輩くんの目標があったら聴かせてくれるかな?


看護ちゃん、名前を覚えていてくれてありがとう!
今回のセミナーでは静脈路確保や気管挿管なんかのスキルを高めたいと思って参加したんだ。


そっか、今日はドクターも指導者側で多く参加しているからとっても勉強になると思うよ。
それと後輩くんは救急救命士だから心肺蘇生法のプロ。女性の参加者も多いから消防士さんとしてリーダーシップを発揮してみんなを引っ張っていって欲しいな!!


ドクターから直接教わる事なんて滅多に無いから凄くいい機会だよ。
心肺蘇生法のプロ?そんな風に思ったこと無かったから嬉しいな。
僕が役に立てることがあれば全力で頑張るよ!!(看護ちゃんのためにも♡)
この例では看護ちゃんはしっかり後輩くんに対して人に好かれる6原則を実践し、好意と行動力を引き出しています。
自分に誠実な関心を寄せ、興味のあることについてしっかり話を聴き、得意な分野の承認までしてくれる。
こんな人がいたら異性ではなくても好意を抱かない方が難しいですよね。
このように人から好かれることができれば自然と人を動かすことができるのです。


人を動かす原則って本当に凄いな!!
こんな風に自分のことを大切にしてくれる人にはお返ししたいって思っちゃう。


デール・カーネギーの『人を動かす』が発刊されたのは1936年。
80年以上前の書籍だけどその考え方はまったく色褪せない。
これは人間の心理は時代が変わっても不変だということの証拠だよね。


人を動かすにはある一定のルールがある。それは意識さえすれば誰にでも実践可能な原則です。
消防を退職して民間企業に就職した私は突然、救急救護についての専門家になりました。
数年後には年上のメンバーをまとめるリーダーの立場に。
悩める私を救ってくれたのがデール・カーネギーの「人を動かす」だったのです。
今回は私が経験したエピソードをQ&A形式でご紹介します。
- 転職当初どんな状況だったか教えて?
- 消防を退職して民間救命士となり最初のミッションは、素人の従業員に消防の救急隊員並みの知識とスキルを身につけさせる事でした。消防士時代、住民向けの救急講習は担当していたものの、救急救護について本格的な指導は初めて。しかも全員が年上という未知の領域でした。
上意下達で先輩に意見することなど許されない状況に身を置いていた自分にはもの凄いプレッシャーだったことを覚えています。
- どうやって人を動かしたの?
- 最初は年下ということもあって、メンバー達は私の話に全く耳を傾けてくれませんでした。
思い悩む私は藁にもすがる思いでデール・カーネギーの『人を動かす』を手に取ったのです。
そこには人を動かすための原則と自分の行動を変えることによって他者の行動を変えていく重要性が示されていました。これに感銘を受けた私はこの原則を実践する事を決めたのです。
- 人を動かす原則を実践してどう変わったの?
- それまでは会社で唯一の救急救命士ということもあり、どこか上から目線な部分もあったのですが、まずそこを改めました。メンバーと同じ目線に立ちしっかり相手の話を聴いて疑問には真摯に答え、良いところがあれば心から褒めるようにしたのです。そうしているうちに徐々にですがメンバーも私の話を聴いてくれるようになりました。
リーダーになった後もこの原則はいつも私を助けてくれました。
人を動かすにはまずは相手の立場に立ち求めているものを与える。これはコミュニケーションにおける真理だと思います。


パパも最初の頃はたくさん苦労したんだね。
1冊の本で状況が大きく変わるって凄いな!!


一番年下だったということもあって気も使うし毎日ヘトヘトだった記憶があるよ。
デール・カーネギーの人を動かすを読んで確かに人生が良い方向に変化した気がする。
これからも人に好かれ愛される人間でいられるよう原則を実践していくよ!!


・人を動かすには「人を動かす3原則」と「人に好かれる6原則」を実践する
・承認欲求を満たすことによって自己実現への課程で人は動く
・自分の行動を変えることによって相手も変わる
人を動かす原則を実践し人に好かれ愛されればあなたは人を自由に動かす事ができるでしょう。
それには相手の立場に立ち相手の真に求めているものを与える必要があります。
本田技研工業を創業した本田宗一郎は人を動かす秘訣を次ぎのように語っています。
「人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになれる人である」まさにコミュニケーションの本質を突いた名言ですね。
今回ご紹介した人を動かす原則があなたの人生に少しでも良い影響を与えられたのならこんなに幸せなことはありません。


人に好かれ愛される救急救命士のための人を動かす。
今回紹介した原則を理解し実践すればあなたの人間関係や仕事のやりがいは大きく変化することでしょう。
救急救命士のことをまとめているこちらの記事も是非ご覧ください。


分かったーと思っても、すぐ忘れてしまうのが、この分野。
感情に任せて怒るようなことはせず、忍耐強く対応していると、芽の出る人からは芽が出る。私は、それを摘まないようにしているだけです。
実例を提示すれば、何回、聞いてもイイのがこの分野ですよねー😀
コウさん
コメントありがとうございます。
人間なので感情的に怒ってしまうこともあると思います。
でも、そこを抑えて相手に寄り添えたら新しい景色が見えてきますよね!!
私の経験が少しでも役に立てば幸甚です。