目標だった消防に就職して救急救命士として働いているけど、自分の選択は本当に正しかったのだろうか?
仕事には慣れてきたけどモチベーションを保てない。
こんなお悩みを持っている方は多いのではないでしょうか?
24時間のストレスフルな勤務、緊迫した現場、住民の期待。救急救命士の肩には多くの物がのしかかってきます。
組織の中で自分を保つことができず退職を余儀なくしてしまう若者も少なくありません。
この記事ではモチベーションをコントロールし高い状態に保つための方法として「多様性」と「メンター」について解説します。
・救急救命士がモチベーションを保つ方法とは
・多様性やメンターの活用方法
・救急救命士エピソード紹介

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
これまで職場内外で様々な医療従事者の方々と交流して多様性とメンターを持つことの重要性を肌で感じてきました。
消防救急救命士はすべての人に誇れる立派な職業です。しかし、内状はモチベーションを保てず苦しい思いをしている方がたくさんいます。
今回の記事では低下しがちなモチベーションを保つ方法についてご紹介します。
目次

モチベーションとは「動機」を意味する言葉で、日本では「やる気」「意欲」などとも解釈されます。
救急救命士の国家資格に合格し希望に溢れ消防に無事就職できた。この時のモチベーションの高さは想像に難しくありません。
しかし、5年、10年経つとあの頃の情熱はとうに過ぎ去り惰性で救急車に乗る日々。
モチベーションは救急活動やその他の仕事の質に大きく影響する重要な問題です。
それではどのような場合にモチベーションが上下動するのか見てみましょう。

図のようにモチベーションはポジティブなイベントで上昇し、ネガティブなイベントやマンネリ化で低下します。
ネガティブな出来事は自分ではコントロールできない領域ですが、ポジティブなイベントは自分の行動で作り出すことができるのです。
いかにしてポジティブな状況を作り出すか。これが高いモチベーションを維持する上で重要なポイントになります。

モチベーションて山あり谷ありなんだね。
パパもやっぱりモチベーションの維持には苦労したの??

うん。救命士の国家資格に合格して消防士になった時はモチベーションは凄く高かった。
でも人間関係や仕事のミスで何度もやる気や意欲を失ったことがあるよ。
モチベーションのコントロール
モチベーションのコントロールを考える上で心理学者マズローの提唱した5大欲求を理解する事が大切です。
マズローは人間の欲求を「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つに分類しました。
これらは下層の欲求が満たされる事により上層の欲求に繋がっていくのです。
特に高次の欲求である承認欲求と自己実現欲求はモチベーションに大きく関わってきます。

消防救急救命士であれば低次の欲求である生理的欲求、安全欲求、社会的欲求はすでに満たされている場合がほとんどでしょうが、承認欲求や自己実現欲求はそうはいきません。
承認欲求は他者から認められて初めて満たされる欲求だからです。そしてこれが満たされない限りモチベーションの源泉となる自己実現欲求は生まれないのです。
モチベーションを高く維持するためにはこの他者からの承認というプロセスが必須となります。
最上位の自己実現欲求に到達できれば夢や目標の実現に向けて自らが進んで考え行動することにより、あなたの人生の質は確実に高まるでしょう。

マズローの5大欲求か!
確かに食べるものやお家、お金がないと生きていけないし、
誰かに認めてもらえないと。夢に向かって頑張ろうとは思わないよね。

誰かに認められたい尊敬されたいっていう思いは多くの人が持っているけど、
ここが満たされないことで最上段の仕事のやりがいまで進めない人がたくさんいる。
特に消防には褒めるって文化があまりないから承認欲求のクリアが特に難しいんだよね。
多様性の獲得方法

多様性とは性別、年齢、職業など価値観やライフスタイルの異なるもの同士が交わることによって生まれる価値のこと。
近年、女性救急救命士が増えてきたとはいえ、消防組織はまだまだ伝統的な男社会。多様性とは真逆の特性を持っています。
消防という1つの価値観の中で生きていると、変化が乏しく承認する機会も承認される機会も極端に少ないのでモチベーションの維持は難しくなります。
職場以外の活動や交流によって多様性の中からモチベーション向上に繋がる人間関係を構築することはとても重要。
そこで私の経験から多様性を獲得するためのオススメ5選をご紹介します。
医療系セミナーへの参加:JPTEC・ICLS・BLS等の他職種参加セミナー参加
イベント救護参加:大規模マラソン、スポーツ・ライブ等のイベント救護参加
趣味のサークル活動:スポーツや趣味のサークル参加
SNSの活用:TwitterやInstagram等のSNSでの交流
オンラインサロンの活用:興味のある分野のコミュニティ参加
この中で救急救命士としての知識やスキルを向上させながら多様性を獲得できる医療系セミナーへの参加が特にオススメです。
病院内でのチーム蘇生を学ぶことのできる「ICLS」受講者には救急救命士だけではなく、医師、看護師、薬剤師等の様々な職種の方々がいます。
他職種でチームを組み1日を通して救急救命を学ぶ。まさに救急医療における多様性の縮図です。
指導者であるインストラクターまで進めば、後進を育てるという同じ志を元に、バックボーンの異なる他の医療従事者から多くの刺激を受けモチベーションは大いに高まることでしょう。
気軽に開始できるものとしてはTwitterなどのSNS活用も様々な価値観に触れることができ視野が広がります。

多様性ってとっても難しい言葉だね。
僕は小学校の同じクラスにお友達がたくさんいるけどこれも多様性なの??

そうだね。小学校にはいろんな個性の子がいるからそれも多様性の一つ。
同級生だけじゃなくいろんな学年のお友達ができれば視野が広がってもっと楽しくなるよ!!
メンターを持つこと

メンターとは「指導者」や「助言者」の事です。近年、民間企業ではこのメンターの活用が活発になってきました。
指導者、助言者というとどうしても職場の上司や先輩をイメージしてしまいがちですが、メンターは立場がフラットで利害関係のない人がいいと言われています。
同じ職場で価値観が近い者同士では発展性が乏しく新しいアイデアや価値の創造であるイノベーションが起きにくいからです。
自分に合うメンターを持つことで承認欲求が満たされて自己実現欲求により仕事に対するやる気がでて、モチベーションを向上させる事ができるでしょう。
それでは良いメンターの3つの条件をご紹介します。
・観察力、傾聴力、受容性に優れている
・人材育成の意欲、人生経験が豊富
・ティーチングではなくコーチングを行える
メンターは相手の話をしっかり聴き承認して、教えるのではなく質問によって気づきを引き出してくれる人が適材です。
そのようなメンターを見つけることができれば、あなたの承認欲求は満たされ、モチベーションが高まりより高次の自己実現へと進んでいけるでしょう。
是非、多様性の項目で述べたような活動を通じて素晴らしいメンターを見つけてください。
世界は広いです。日本だけでも1億2000万人以上の人が暮らしています。きっとあなたの身近にもこれらの条件を備えた最高のメンターがいるはずです。
メンターに必須スキルであるコーチングについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


救急救命士がモチベーションを向上させるための多様性とメンターの重要性についてご紹介しました。
承認欲求が満たされ自己実現欲求の段階を維持できれば、救急救命士という資格はやりがいを与えあなたの天職となるでしょう。
そうすることで救急活動に対するモチベーションは高まり、より多くの命を救えるのです。
是非、消防という組織から一歩を踏み出して外の世界を探索し、より良き理解者・相談者を見つけてください。

異なる年齢や性別、職業の人達と交流することで、お互いが良い刺激を与え合って新しい気づきや発見をすることがあります。
これを「シナジー効果」といいます。シナジーを上手く発揮することができれば1+1=2ではなく、5にも10にもすることができるのです。
お互いにシナジーを発揮できる仲間がいれば、あなたの人生の質は驚くほど高まりより充実したものになるでしょう。
次は実際の例を用いて良いメンター、悪いメンターについてご紹介します。
モチベーションを下げるメンター
日本ではまだメンターの文化が浸透していないので、残念ながらモチベーションを下げてしまうメンターもいます。
上下の規律が厳しい消防の先輩後輩関係ではこちら側のメンターが多い印象。
同じ職場、同じ部署のメンターでは多様性を確保できないのでどうしても意見が片寄りがちになってしまいます。
相手の話に耳を傾けるのではなく、一方的に自分の意見や価値観を押し付けてしまうのも特徴です。
それでは会話形式でモチベーションを下げてしまうメンターを確認してみましょう。

先輩さん、また救急活動でミスして隊長に叱られてしまいました。
僕は救急救命士に向いていないのでしょうか??

そういう悩みは誰にでもあるし経験するものだ。
救急救命士になったからにはもっとプロ意識を持てよ。自覚が足りないからミスするんだぞ!
それに俺の若い頃はもっと先輩に怒られたんだから、お前はまだましな方だよ。

はぁ、そうですね。
今後はもっと自覚を持って活動に当たります。
(モチベーションDown)
この例では後輩くんは上司に叱られモチベーションが下がっていたので、メンターである先輩さんに相談しました。
しかし、先輩さんは後輩くんの話をよく聴きもせず自分や職場の価値観を押しつけてしまっています。
これでは下がったモチベーションを上げることはでいません。逆に更にモチベーションを下げてしまう最悪の結果となりました。
このようなやりとりが続けばそれがプレッシャーとなり、更なる重大ミスを引き起こす可能性が高まります。
モチベーションを維持、向上するためのメンター選びは非常に重要になります。
モチベーションを上げるメンター
モチベーションを上げてくれるメンターはしっかり話を傾聴、承認し適切なフィードバックを与えてくれる存在です。
このようなメンターを持つことができれば、モチベーションは向上し相談者は自己実現に向かって歩き出します。
可能な限り多様性の中に身を置き自分が心から尊敬し共感できる人をメンターにしたいですね。
それでは会話形式でモチベーションを上げてくれるメンターを確認してみましょう。

看護ちゃん、この前、救急現場でミスをして隊長に叱られたんだ。
俺って救急救命士に向いてないのかな??

後輩くんが凄く頑張っているの私知ってるよ。
1年目だもんミスするのは当たり前。次に同じ失敗をしない様に気を付ければいいよ。

ありがとう。でもスキルが足りていないのは事実なんだ。
何か心肺蘇生法や特定行為のスキルアップに繋がる方法はないかな?

私この前、院内の心肺蘇生法のセミナーに参加してきたんだけど、とっても勉強になったよ。
チーム蘇生や気管挿管、薬剤投与の実習もあるから後輩くんの役に立つかも!!
医師や看護師だけじゃなくて薬剤師さんや技師さん達も参加してていい刺激になるよ。

そうか!そんなコースがあるんだね。
少し勇気がいるけど次回のセミナーに申し込んでみるよ!
(モチベーションup)
看護ちゃんがよきメンターになったことで、後輩くんの承認欲求が満たされスキルアップという自己実現に向けて歩き出すことができました。
救急現場でのミスで下がっていたモチベーションも再び高まり、きっと次はよい活動ができることでしょう。
このように自分にはない視点を持ち気づきを引き出してくれるメンターを見つけることができれば、高いモチベーションを維持する事が可能となります。

モチベーションを上げてくれるメンターって凄く大切だね。
僕も看護ちゃんみたいなメンターが欲しい!!

パパにもたくさんのメンターがいるけど本当にいろんなことを気づかせてくれる。
彼らの存在が今の高いモチベーションに繋がっているんだ!!

救急救命士とモチベーション。病院前救急医療のプロとして働く上でモチベーションのコントロールは必須となります。
しかし、人間関係や過酷な現場等でこのモチベーションを維持できない救急救命士が多くいることも事実。
私自身、民間救急救命士になった当初はモチベーションのコントロールに非常に苦労しました。
そんな時にモチベーションを高めてくれたのはやはり他職種のメンター達だったのです。
ここでは私の経験したモチベーション向上のエピソードをQ&A形式でご紹介します。
- どうしてモチベーションが下がってしまったの?
- 民間救急救命士になって最初の壁はモチベーションの維持でした。慣れない環境に滅多にない救急活動。消防学校の同期生達は多くの現場を経験して救急医療のエキスパートになっていく。人の命を救うために努力を重ねて救急救命士になったはずなのに自分は何をやっているんだろう?そんな疑問が何度も頭を駆け巡りモチベーションはどんどん低下していきました。
- どうやってモチベーションを維持したの?
- そんな自分を変えるため医療系のセミナーに参加した時のこと。民間の救急救命士として色眼鏡で見られることもありましたが、中にはマイノリティーである私を認め目をかけてくれる医師や看護師、救命士の方々がいたのです。その方達の勧めでインストラクター資格を取得してセミナーで指導を担当するようになりました。インストラクターの活動の中で懇意になったある医師に悩みを打ち明けると、「例え現場で命を救うことができなくても、医療従事者を育てることで間接的に多くの命を救えるのではないか。」との助言をいただいたのです。この言葉で私は吹っ切れました。
- その後はどうなったの?
- 自分にしかできないインストラクションを目指して指導方法を研究したり、当時は珍しかったコーチング手法を取り入れ積極的にコース運営に貢献することで、多くの医療従事者に認められ、中には「あなたの指導のおかげで変われた」や「あなたのような指導者を目指したい」などの言葉をかけてもらえるようにもなりました。
今思えば多様性の中で出会った仲間達が私の承認欲求を満たし、指導者という自己実現まで導いてくれたのだと思います。
今でも彼らと交流することでモチベーションが大きく上がり、新しい目標へチャレンジできます。

セミナーで出会った仲間達の存在がパパを変えたんだね。
なんだか感動しちゃったよ。信頼するメンターがいるって幸せなことだね!

彼らとの出会いがなかったら今の自分はなかったと思う。
教え導いてくれたメンター達には本当に感謝しているよ。

・モチベーション維持向上には多様性とメンターが重要
・承認欲求が満たされると高いモチベーションに繋がる
・メンターは傾聴、承認し気づきを与えてくれる人が理想
モチベーションはすべての思考行動の原動力です。モチベーションの高低がその人の人生の質、すなわちQOL(クオリティーオブライフ)を左右します。
残念ながらモチベーションは黙っていると徐々に下がっていってしまうもの。
しかし、今回ご紹介した方法を実践すれば高いモチベーションを維持することも可能です。
それには勇気を出して一歩踏み出す必要があります。踏み出せばその一足が道となるのです。
是非、多様性の中で良きメンターを見つけてください。そうすればあなたの人生は更にキラキラと輝くものになるでしょう。
今回ご紹介したモチベーションのコントロールがあなたの人生に少しでも良い影響を与えられたのならこんなに幸せなことはありません。

救急救命士とモチベーションのコントロール。
良きメンターを見つけることにより高いモチベーションを維持することが可能になります。
彼らの援助を受けマズローの5大欲求の頂点である自己実現を目指してくださいね。
救急救命士のことをまとめているこちらの記事も是非ご覧ください。

メンターは職場には居ないので、外に行くしかない。自分は良きメンターになるよう努力をするけど、後輩君は、外へ出てメンターを探す方がイイ。
これが私の考えです。モチベーション管理、コーチング手法、勉強になるコースの紹介といった組み合わせで、勉強になりました。
コウさん
コメントありがとうございます。
なかなか良いメンターに巡り合うことって難しいですよね。
やっぱり後輩くんは外の世界に出てメンターを自分で見つけてくるべきですね!
いつもコメントをいただけて嬉しいです♪
いつもコメント書きっぱなしですみません😭勉強になってますよー😀