消防の救急救命士と聞いて皆さんはどのようなイメージを持ちますか?
- 男らしくてカッコイイ
- 人助けができてやりがいがありそう
- 心臓が止まっている人や血を流している人に対応するのは大変そう
小学生や幼稚園児の将来なりたい職業常連の「消防士」。その中でも特に出動回数が多くたくさんの人の命を救うことができるのが「救急救命士」です。
救急救命士が誕生したのは平成3年。2021年の今年はちょうど誕生から30周年の節目。
今回の記事では消防救急救命士にスポットを当て彼らが普段どんな仕事をしているのかご紹介します。
・消防救急救命士ってどんな勤務体系なの?
・消防救急救命士って普段どんな仕事をしているの?
・消防救急救命士の生の声が聞きたい。

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
救急救命士は人の命を救うことができるやりがいある仕事。
しかし、救急救命士の存在は知っているけど、具体的にはどんな仕事なの?
そういう疑問を持っている方が多いのも事実。
「救急救命士をもっとみんなに知ってもらいたい!」それが私の想い。
この記事が皆さんに消防救急救命士を知っていただくきっかけになってくれると幸いです。
目次

消防救急救命士の勤務体系は基本24時間体制です。
火災や救急出動はいつ起こるかわかりません。住民からの119番通報に備えて消防署に24時間待機して有事に備えています。
消防によって2交代制、3交代制のシフトを組み、それをローテーションすることにより常に消防署に必要人数の消防士、救急救命士が待機できるようにしているのです。

救命士さんって僕たちの安全と命を守るために消防署で1日中働いてくれてるんだね。

うん。住民の生命と財産を守ることが彼らの務め。
いつ何時でも対応できるよう24時間勤務してくれているんだよ。
24時間勤務の仕組み
24時間勤務とはいえ、昼夜の休憩、仮眠時間を除くと実質は16時間勤務。
サラリーマンの8時間勤務を24時間の中で2回行っている計算になります。
休憩中や仮眠時間に火災や救急出動があれば時間外勤務という形で対応します。
一般的に消防救急救命士は休みが多いといわれるゆえんは、1回の勤務で2回分働いているからそのように見えるというのが正確なところですね。
2交代制シフト
2交代制シフトとは簡単に言うと、消防職員を2グループに分けて毎日交代で勤務する体制のこと。
2グループを更に3つの組に分けローテーションすることで安定して休みを確保することができます。
基本は24時間勤務した次の日は非番日、2回24時間勤務した翌日は非番日、その翌日から週休、週休と連休になります。
非番日は何もなければ休みですが、災害やイベントなどがあれば優先的に招集される日のことです。
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 |
24時間勤務 | 非番日 | 24時間勤務 | 非番日 | 週休日 | 週休日 |
24時間勤務 | 非番日 | 24時間勤務 | 非番日 | 週休日 | 週休日 |
・24時間勤務を2回すると3連休があり、イベントや旅行などの予定が立てやすい
・グループの中でローテーションがあるのでいろんな人と働ける
・1回目の24時間勤務で夜間出動などが重なると非番が寝るだけで終わってしまう
3交代制シフト
3交代制シフトは消防職員を3グループに分け、3日に1回そのグループ全員で勤務します。
勤務体制は2交代制よりシンプルで24時間勤務の翌日が非番、翌々日は週休。
ただし勤務時間の調整で月に数回、週休日に8時間の日勤勤務が入る消防もあります。
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 |
24時間勤務 | 非番日 | 日勤 | 24時間勤務 | 非番日 | 週休日 |
24時間勤務 | 非番日 | 週休日 | 24時間勤務 | 非番日 | 週休日 |
24時間勤務 | 非番日 | 週休日 | 24時間勤務 | 非番日 | 日勤 |
・24時間勤務の後は基本2連休となるので疲れが取れやすい
・勤務スケジュールが3日に1回と固定されているので見通しが立てやすい
・同じメンバーで勤務するので連携が取りやすい反面、人間関係しだいでは苦痛となる

救命士さんは土曜、日曜関係なく24時間、僕らのために働いてくれているんだね。
パパが消防の救命士さんだったらお仕事の日は、僕の運動会や発表会に来れなくなっちゃうの?

そうだね。誰かは必ず消防署にいなくちゃいけないからそんな時もあるけど
みんな仲間同士で休みを交換しながら可能な限り参加しているよ。

救急車に乗って傷病者を救護するイメージが強い救急救命士ですが、救急出動の他にも多くの業務をこなしています。
ここでは消防救急救命士の主な業務内容をご紹介します。
・救急出動
・救急訓練
・事務作業
・救命講習
消防救急救命士のリアルな日常を知りたい方はこちらをご覧ください。

救急出動
救急出動は救急救命士の知識・スキルが最も活きる瞬間。
病気や怪我で困っている人達の元にいち早く駆けつけ、状態を確認し、適切な医療処置を施します。
病態や重症度、かかりつけ病院など複数の情報を瞬時に分析し、一番適切な病院を選定し搬送。
救急現場には1つとして同じものはありません。常に緊張感を持ちながら傷病者の利益を一番に考え行動する。
瞬間瞬間の判断が傷病者の生命を左右することもある。それが救急出動です。
救急出動の主なステップをご紹介します。
消防署の通信指令員が119番通報を受信し、名前、住所、病気、怪我の状況等を素早く聴取する。
通信指令員から通報内容が伝達されしだい救急車に乗って出動する。
サイレンを鳴らし緊急走行で傷病者のいる現場に向かい、安全な場所に救急車を止める。
傷病者に接触して詳細に状態を観察する。例:バイタルサイン測定(意識、呼吸、脈拍、体温、血圧)、全身観察、問診等
傷病者の状況に合わせて適切な救急救命処置を実施する。例:心肺蘇生法、止血処置、骨折固定、酸素投与等
傷病者の病態や重症度、かかりつけ病院を総合的に勘案して搬送病院を選定する。
移動式担架(ストレッチャー)を用いて救急車内に傷病者を収容する。
緊急走行で搬送先病院へ傷病者を安全に搬送する。救急車内では継続観察、処置、引継書の記載を行う。
病院に到着後、医師や看護師に傷病者の状態や行った処置を伝達し引き継ぐ。
消防署に向けて通常走行で移動する。次の救急出動に向けて使用した資機材の片付けや清掃を行う。
救急訓練
救急救命士には訓練が欠かせません。様々な現場を想定した実戦的な訓練を日々行っています。
・心臓が止まった傷病者への対応訓練
・交通事故や転落など怪我に対する対応訓練
・脳梗塞や脳出血など脳疾患傷病者への対応訓練
・災害などの多数傷病者対応訓練
「訓練でできないことは絶対に現場でできない」こんな格言が生まれるほど、訓練は救急救命士にとって大切な業務の1つです。
最近では消防大学校で指導技法を学んだ指導救命士が後輩の育成に効果を上げています。
上記の訓練の他にも消防隊、救助隊との連携訓練など訓練は多岐にわたります。
事務作業
救急救命士といえど事務作業は必須、救急出動して救急救命処置を行った後は必ず救急救命処置録を作成します。
救急救命処置録は救急救命士法第46条に定められた活動記録です。
救急救命士は、救急救命処置を行ったときは、遅滞なく厚生労働省令で定める事項を救急救命処置録に記載しなければならない。
前項の救急救命処置録であって、厚生労働省令で定める機関に勤務する救急救命士のした救急救命処置に関するものはその機関につき厚生労働大臣が指定する者において、その他の救急救命処置に関するものはその救急救命士において、その記載の日から五年間、これを保存しなければならない。
救急救命士法第46条から引用
救急出動の合間には救急救命処置録以外にも救急出動データの整理や自分の担当の事務処理を行っています。
近年は学会で研究発表する救急救命士も増えてきました。事例を研究し第三者にもわかりやすい発表スライドを作成することも求められるスキルの1つです。
救命講習
住民へ対して行う救命講習も救急救命士の重要な業務の1つ。
心肺停止などの1分1秒を争う状況では、目撃した人が心肺蘇生法をするかしないかで救命率が大きく変わります。
救命率を向上させるには地域住民への心肺蘇生法の技術指導、啓蒙が何より大切なのです。
・普通救命講習Ⅰ(心肺蘇生法、AED使用、異物除去、止血法の講習):3時間
・普通救命講習Ⅱ(施設にAEDを設置している職員対象の講習):4時間
・上級救命講習(心肺蘇生法、AED使用、外傷処置、傷病者管理、搬送法の講習):8時間
上記の救命講習を受講することで救命技能認定証が発行されます。
また、医師や看護師、救急救命士等に高度な心肺蘇生法や外傷処置などを教えるセミナーが全国各地で開催されており、そこにインストラクターとして指導に当たる救急救命士も多く存在します。

救命士さんて救急車に乗るだけじゃなくて、他にもたくさんお仕事あるんだね。
なんだか大変そう・・・

そうだね。でもすべては住民の命を守るための仕事なんだ。
そう考えるととってもやりがいがあるよね!!


消防救命士さんのお仕事ってカッコイイなぁ。もっともっと知りたい!!

そうだね。きずなにもっと救命士のことを知ってもらいたいから
パパのお友達の消防救急救命士さんにインタビューしてみたよ。
- 勤務体系とそのメリット・デメリットを教えて。
- 2交代制です。
メリットは週休があると3連休になること。
人の入れ替わりがあるので人間関係のストレスが小さくなることです。
デメリットは勤務が複雑で勤務表を確認しなくては他の人の勤務が把握できないこと。
休みが長いので担当者が長期不在で仕事が進まないことがあるなどです。
- 救急出動以外ではどんな仕事をしているの?
- 基本は事務仕事をしています。やっていることは他の公務員と一緒ですね。
訓練をする消防としない消防がハッキリ分かれています。私の職場は余り訓練をしないのでそれを補うため消防学校での教育に力を入れています。
- 今までで一番苦労した現場を教えて。
- 徹夜で災害活動をしたことです。
豪雨災害で一睡もせずに人命救助を行ったり、行方不明者の捜索を勤務と非番連続で長時間行ったりしました。
- 消防救急救命士になって良かったこと、悪かったことを教えて。
- 社会的に信用ある仕事であること。休みが多いことはメリットですね。
でも、知れば知るほど危険が一杯。自分の命を危険にさらすことや訴訟のリスクもあるので、基本、楽しい仕事ではありません。
- これから消防救急救命士を目指す方々に一言お願いします。
- 我こそは男の中の男という人が目指す仕事だと思います。
スポーツで鍛えた肉体と精神力が必要です。組織には頭脳派や温厚でコミュニケーション能力の高い人など多彩な人材が必要ですが、やはり最後は体力、気力がある者が活躍する世界です。我こそは男の中の男という人は目指してみてください。

現役救命士さんのお話とってもわかりやすかったよ。
僕も勉強やスポーツ頑張って将来は消防救急救命士になりたい!

・消防救急救命士には2交代制と3交代制の勤務体系がある。
・救急出動以外にも訓練や講習、事務処理などの仕事がある。
・消防救急救命士は責任の重い大切な仕事。体力気力が必要。
消防救急救命士の仕事についておわかりいただけたでしょうか?
消防救急救命士は常に人の命と向き合う誇り高き職業です。
時には自分の身を犠牲にしてでも傷病者を守らなくてはいけない時もあります。
そんな現代のヒーローである消防救急救命士達が日夜私たちの生活を守ってくれていること忘れてはいけませんね!

とても魅力的な救急救命士の仕事。
救急救命士になりたい方はこちらの記事もご覧ください。

現役の消防士です。救急隊のスゴさって、なかなか伝わらない部分が多いですよね。救命処置より、搬送して欲しいっていう気持ちが透けて見える時があります。ですが、観察もしないで病院に搬送したら、今度は医師から怒られます。掛けた時間分のメリットがある観察と処置だけを行って搬送します。救急現場という、初めて行った場所で最前を尽くしますが、後から、ケチをつけようと思ったらいくらでも言われてしまう仕事です。
コウさん
メッセージありがとうございます。
救急隊は医療機関と傷病者の板挟みにあう大変な仕事ですよね。
多くの方にそんな救命士や救急隊の苦労を知っていただけたら嬉しいです。