【病院救急救命士ってなに??】救急救命士法改正で大注目!元消防士があの最先端をいく職業を徹底解説!!

皆さんは病院内に救急救命士が働いていることをご存じですか?

救急救命士は消防で働くもの。長い間それが常識とされてきました。

ところが近年、救命センターなどには多くの救急救命士が勤務しています。

そして、令和3年10月に救急救命士法が改正され、正式に職域が「救急外来」すなわち病院内まで拡大されるんです。

今回の記事では病院救急救命士にスポットを当て彼らがどんな仕事をしているのかご紹介します。

この記事を読んでわかること

病院救急救命士ってなんなの?

病院救急救命士ってどんな仕事をしているの?

病院救急救命士の生の声が聞いてみたい。

KID
KID

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです

病院救急救命士は救命士界のニューウェーブ。

30年ぶりの法改正で救急救命士の新しい働き方になること間違いなし。

今、最もホットな話題を提供してくれるのが病院救急救命士です。

「救急救命士の新しい形を一人でも多くの方に知ってもらいたい!」

この記事が皆さんに病院救急救命士を知っていただくきっかけになってくれたら幸いです。

病院救急救命士とはなにか

病院救急救命士とは医療機関に勤務する救急救命士のことを言います。

救急救命士資格は元々、救急隊員に医療行為が許されておらずそれが社会問題化したことによって生まれました。

資格誕生の背景から急病や怪我人が発生した現場から医療機関に運ぶまでの救急医療の専門家としての位置づけです。

【救急救命士ってなに??】病院前救急医療の専門家!元消防士が法改正で今話題の資格を徹底解説!!

それではなぜ医療機関に所属する救急救命士が誕生したのか、今回は救命医療の最前線である救命センターで働く病院救急救命士を例に挙げて解説していきます。

きずな
きずな

病院にも救命士さんがいるんだね。知らなかったよ。

病院の中でどんなお仕事をしているのか想像がつかないな。

KID
KID

病院救急救命士は長い間、日陰の存在として病院内で勤務してきたんだ。

でも令和3年に救急救命士法が改正されて正式に病院で働けるようになるんだよ。

今回は最新の動きも含めてわかりやすく解説していくからね!!

病院救急救命士の誕生背景

救急救命士の資格を取得するには2つのパターンがあります。

救急救命士になる方法

消防の救急隊員として経験を積み救急救命士養成所で専門知識を学び国家試験を受ける方法

救急救命士学科のある大学や専門学校に通い、国家試験を受ける方法

1番目の方法で救急救命士になった場合は全員が消防機関の所属となります。

一方、2番目の方法で救急救命士資格を取得しても全員が消防に就職できるとは限りません。

私が資格を取得した平成14年当時でも女性を中心に消防に就職しない、できない方が何人もいました。

医療系国家資格を持ちながら消防救急救命士として働けない彼ら彼女らには病院という受け皿が必要でした。

病院救急救命士の歴史

病院救急救命士は当初、消防に就職できない救急救命士の受け皿として誕生しました。

しかし、救急救命士はあくまで病院前の専門家。法律上、現場と緊急用自動車内に該当しない病院内では救急救命処置を実施することはできません。

そのため資格を活かすことなく、看護助手として医療行為を含まない補助業務を行う存在に甘んじてきたのです。

看護助手業務内容

・病院内の備品・器具チェック

・ベッドシーツの交換・清掃

・介助業務(食事・排泄・オムツ交換・検査立会い)

・手術器具の清掃(消毒・管理)

ところが近年、救急救命士法を遵守しながら病院内で資格を活かして活躍する病院救急救命士達が現れたのです。

病院救急救命士の新しい形

現在、首都圏の救命センターを中心に救急救命士資格を病院内でありながら、病院前の専門家として活用する取り組みが行われています。

これまでは医師や看護師の助手として限られた範囲の補助業務を行ってきた病院救急救命士達。

救急救命士法44条2項の救急救命処置を実施する場所の制限により院内では心肺蘇生法やバイタル測定のような基本的な救急救命処置さえも禁じられてきたのです。

救急救命士は、救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び第五十三条第二号において「救急用自動車等」という。)以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は、この限りでない。

救急救命士法44条2項より引用

ところが逆転の発想であえて病院内で医療行為を行わない。医師や看護師の下ではなく救急救命士独自の強みを活かしパートナーとして救命センター内に自分たちの地位を確立する

それが病院救急救命士達が選んだ新しい形だったのです。

救急救命士法の改正

彼らの活躍により病院救急救命士の存在感は年を追うごとに大きくなってきました。

救急医療の学会で積極的に自分たちの取り組みを発信したり、消防や民間の救急救命士を病院実習の形で受け入れることにより横の繋がりも構築してきました。

そして満を持して救急救命士法が30年ぶりに改正。令和3年5月21日に成立、10月1日に施行されます

改正後の救急救命士法では、第2条第1項において「この法律で「救急救命処置」とは、(中略)病院若しくは診療所に搬送されるまでの間又は重度傷病者が病院若しくは診療所に到着し当該病院若しくは診療所に入院するまでの間(当該重度傷病者が入院しない場合は、病院又は診療所に到着し当該病院又は診療所に滞在している間。同条第二項及び第三項において同じ。)に、当該重度傷病者に対して行われる(中略)ものをいう。」として、「救急救命処置」の実施場所が拡大される。

厚生労働省 改正救急救命士法の施行に向けた検討について引用

改正内容を要約すると、医療機関内であっても入院するまでの間、すなわち救急外来であれば救急救命処置が実施できるようになるということです。

きずな
きずな

病院救命士さん達ってたくさん苦労してきたんだね。

法律も変わるしこれからますます活躍できそう!!

KID
KID

病院救命士は誕生の背景から不遇の時代が長かったんだけど、発想を転換することで病院内での居場所を見つけたんだ。今回の法改正は彼らのいい追い風になるね!!

これからそんな病院救命士達の新しい働き方を紹介していくよ。

病院救急救命士の業務

救急救命士法を遵守しながら病院内で資格を活かして働く病院救急救命士達。

ここではそれを実現したある救命センターの病院救急救命士の主な業務をご紹介します。

病院救急救命士の主な業務

・消防救急隊からのホットライン対応

・転院搬送・迎え搬送

・病院内で発生した傷病者への救護対応

・心肺蘇生法等の救急講習

・医師事務作業補助

ホットライン対応

消防救急隊から入る病院への受け入れ要請コール。これを「ホットライン」と呼びます。

病院によって対応者は違いますが、通常は医療事務員もしくは看護師が電話を受けて医師に指示を仰ぎます。

このホットラインを救急救命士の病院前の知識を活かして救急隊から必要情報を適切に聴取し伝えることで、忙しい医師や看護師の負担を大きく減らすことができます。

ホットラインの聴取内容

・年齢・性別・氏名

主訴・バイタル・既往歴・服用薬

緊急性・重症度の判断(コールトリアージ)

病院収容時間

消防救急隊も病院救急救命士が応対すると共通言語で情報が伝達できるので、病院選定時間の短縮など双方にとってメリットがあるのです。

また、消防救急隊からのホットラインだけではなく、他の病院からの転院依頼や患者からの相談電話も病院救急救命士が対応しています。

転院搬送・迎え搬送

病院から病院への患者搬送を転院搬送といいます。

多くの病院は転院搬送を消防救急車が担っていますが、病院救急救命士と救急車があれば病院間だけで完結することができます。

また今現在、救急救命士は病院内で救急救命処置は法律上実施できませんが、院外である救急車の中では実施可能

救命センターで初期治療を行って容体が安定した患者を、入院先の病院へ病院救急救命士のみで搬送します。

メリット

増え続ける消防救急車の出動件数を抑制できる

救命センターで患者を安定化させすぐに2次病院に送ることで、各病院の機能を最大限に発揮できる

病院救急救命士だけで活動が可能なので医師、看護師の同乗が必要なく負担を減らせる

また他の病院で病状が悪化し処置が困難になった患者に対する迎え搬送も病院救急救命士の仕事

緊急走行で要請を受けた病院に向かい、患者を収容し自分の病院へ搬送。この間に医療処置が必要な場合は、メディカルコントロール体制下で救急救命処置を実施します。

傷病者の救護対応

大規模な医療機関であれば患者はもちろん家族やお見舞いなど、1日の来院者は数百人規模となります。

中には体調を崩したり、転倒して怪我をしたりする人もいるので、その際は病院救急救命士が消防救急救命士と同様に現場に出動して観察、処置、搬送を行います。

病院救急救命士の活動は以下のステップです。

病院内で傷病者が発生

病院で急病や怪我が発生した場合、病院救急救命士に連絡が入る

出動

救急処置バックや搬送資機材を準備し現場に急行する。

傷病者接触・観察

傷病者に接触して詳細に状態を観察する。例:バイタルサイン測定(意識、呼吸、脈拍、体温、血圧)、全身観察、問診等

搬送先の選定

病態や怪我に応じて搬送する診療科を選定する。重傷の場合は救命センターに搬送する。

搬送・引き継ぎ

搬送資機材を用いて各診療科に搬送し、医師、看護師に状況を説明して引き継ぐ

このように病院内において病院救急救命士は頼もしい救急隊としての仕事も担っているのです。

救急講習の開催

心肺蘇生法などの技術を他の医療スタッフに教育するのも病院救急救命士の重要な役割です。

餅は餅屋といいますがやはり病院内で心肺蘇生法が最も得意なのは救急救命士。

病院救急救命士は院内の知識も豊富なので病院の現状に合わせた救急講習が実施可能なのです。

心肺蘇生法の内容

意識の確認と通報

胸骨圧迫

人工呼吸

AEDの使用方法

心臓が止まった傷病者に対する対応は1分1秒を争う超緊急事態。

そんな状況で適切な処置ができるスタッフを育成すること。これも病院救急救命士に課された使命です。

医師事務作業補助

医師の長時間労働が昨今話題になっています。これが今回の救急救命士法改正のきっかけとなりました。

医師は患者の診療や処置の他にも膨大な事務処理業務を抱えており、これが長時間労働の温床になっているとの指摘されているのです。

この事務作業のタスクを病院救急救命士が代行して行うこと、これが医師事務作業補助です。

医療クラークやメディカルアシスタントと呼ばれる仕事ですね。

医師事務作業補助の内容

・診断書などの文章作成代行

電子カルテなどの入力代行

診療に関するデータ管理・整理

これらの補助を病院救急救命士が代行することにより、医師は医師だけが行える業務に集中できるので、結果として病院の質が向上し患者さんの満足度が上がります。

病院救急救命士はチーム医療を支える縁の下の力持ちとして、他の医療スタッフからも信頼を得ています

きずな
きずな

病院救命士さんて病院の中でいろいろなお仕事をしてるんだね。

KID
KID

彼らはあえて医師や看護師との仕事と差別化することで自分たちの強みを活かした働き方を確立したんだ。

医師、看護師の下ではなく対等なパートナーとして存在する。これは素晴らしいことだよね!!

病院救急救命士インタビュー

きずな
きずな

病院救命士さんて新しいことにたくさんチャレンジしててカッコイイな!

もっとお話聞いてみたいよ!!

KID
KID

パパの友達の病院救命士さんにインタビューしてみたよ。

彼は元消防士で病院救命士のパイオニア的存在なんだ!!

救命センターで働く救命士のリアルな話がたくさん聞けたよ。

職場の人数や勤務体系を教えて。
現在、当院では14名の病院救急救命士が勤務しています。男性が8名、女性が6名です。
勤務体系は看護師と同様で日勤、夜勤の2交代制で24時間院内に救急救命士が待機できる体制を整えています。
病院内での救命士の待遇を教えて。
以前は医療職ではなく医事課に所属していましたが、病院内での功績が認められ、数年前に副診療部門の所属となり放射線技師や臨床工学技士と同様の専門医療職として働けるようになりました。
看護部の直轄として救急救命士を置いている病院が多いと思いますが、そうなるとどうしても看護師の補助がメインになるので、病院救急救命士として独立した部署を作れて良かったです。
ホットラインや救急出動はどのくらいあるの?
ホットラインは2020年合計で14000件。1日平均40件の電話を受けています。
この他に他院からの転院相談が3500件あり、これに救命士が対応することで医師、看護師の負担を大きく減らすことができています。
病院救急車出動件数は年間900件、1日平均2、3件の転院搬送と迎え搬送を行っています。最近は転院先の病院との信頼関係もできてきたので、時間外でも転院を受け入れてもらったり病院救命士の転院搬送の有効性を実感しています。
メディカルコントロールは確立できているの?
院内でメディカルコントロール協議会を立ち上げて医師の指示、助言を受けられる体制を取っています。このことにより転院搬送など病院外では医療行為が可能となりました。
病院救急車で出動して救急救急処置を行った時は救急救命処置録を作成しますし、事後検証も1次検証を救命士が2次検証、3次検証を医師が行います。
病院救急救命士に必要な独自のスキルってあるの?
基本的にはないです。救急救命士の養成機関でしっかり学んでいれば、必要な知識やスキルは働きながら身につけることができます。
あえて言うならコミュニケーションスキルは消防救命士より必要かもしれません。
なぜなら院内には様々な職種の人達が働いているからです。その人達と円滑な人間関係を築き、信頼してもらうことが病院救命士にとって一番の課題かもしれませんね。
今後の法改正についてどう考えているか教えて?
正式に救急救命士の職域が病院内に広がるのは喜ばしいことですが、現行の救急救命処置、特に特定行為がそのまま救急外来で機能するかは疑問符がつきますね。例えば救急外来では静脈路確保を行った際は必ず血液検査のため採血を行います。救急救命士は採血が認められていないのでルート確保後は看護師に処置を引き継ぐことになります。これではせっかくの医師、看護師のタスクシフトが上手く活かせません。
人的資源が豊富な救命センターとその他の医療機関では求められる救急救命士の役割も違ってくるので、その辺の基準が明確になればもっと資格を活かして病院内で働けるようになると思います。
これから病院救急救命士を目指す方々に一言お願いします。
消防に勤務していようと、病院に勤務していようと、民間企業に勤務していようと救急救命士はみんな傷病者や患者のために働いています。誰かのために働ける場所なら救急救命処置をしようがしまいが、場所がどこであろうとも関係ありません!
病院救命士はこれから造っていく職種なんです!興味のある方は一緒に頑張りましょう!!

まとめ

Point

消防機関以外の救急救命士の受け皿として生まれたが、現在は独自の働き方を確立している

ホットライン、転院搬送、医師事務補助業務など医師・看護師のタスクシフトに貢献している

法改正があっても病院救急救命士が活躍するには特定行為などの課題がある

病院救急救命士の仕事についておわかりいただけたでしょうか?

病院救急救命士は病院内と現場を繋ぐ者。彼らの存在で救急医療が1つのチームとして機能し、結果的には病院、救急隊、患者すべてに利益をもたらします

そのためにはすべての関係者の信頼を得る必要がある。彼ら彼女らの日々の献身的な働きには尊敬しかありません。

そんな救急救命士の新しい形。これからの病院救急救命士の活躍から目が離せませんね!

KID
KID

救急救命士の新しい形である病院救急救命士。

病院救急救命士以外の資格の活かし方を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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2 COMMENTS

コウ

踏み込んで記事を書かれている分、考えさせられる部分が多いです。

大規模病院で、急変事案が発生した場合、その全てを院内救命士が対応することにすれば、素晴らしい。次に、法律の解釈だけど、「入院までの間」という部分が、「既に入院している人」は大丈夫ってなる。そこは、一般病棟から「ICU」に再入院という解釈にすれば、クリア出来るのかなって思います。

次に、この解釈が良いかは、弁護士に相談すべきところだけ、「違法」を訴えるには、「違法」の証明が無いといけないから、そこは、あまり臆病にならず、進んでいけば良いのかなと思います。

次に、院内救命士の装備だけど、ABCのクリアを目的に考えて、もっとも効果的な物だけ持って行けば良いかもね。

何もかもに対応するよりは、ターゲットを絞って、迅速さや、コスパで勝負した方が、重宝がられると思います😃

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KID

コウさん
コメントありがとうございます。

なるほど、すでに入院している方にも救命士が対応できれば彼らの活躍の幅は更に広がりますね!!法律の解釈は非常に難しい。そのことで今まで救命士は消防でしか活かすことのできない資格と言われてきたのですから・・・

そうですね!病院内で独自色を出すことが病院救命士にとって地位確立に繋がると思います。

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