救急救命士資格を取得して消防士になったけど職場が合わない、理想と現実のギャップにモチベーションが保てない、転職したいけど消防以外で資格を活かす方法がわからない。
こんなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
救急救命士は厚生労働大臣から免許を受ける国家資格です。
しかし、医師や看護師、薬剤師のように自由に転職し職場を変えることはできません。
なぜなら救急救命士は元々消防のために作られた資格だから。
この事実を知らずに消防に就職し、その独特な世界に適応できず苦しんでいる仲間が大勢います。
今回の記事ではそんな悩みを解決するヒントになり得る、消防以外で救急救命士資格を活かすための転職5選をご紹介します。

こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
消防救命士になったけどこのまま消防に所属していて大丈夫だろうか?
そんな葛藤を抱えている人は多いと思います。
この記事では「救急救命士をもっと自由に!」をテーマに様々な転職の可能性について解説します。
・救急救命士転職先5選
・救急救命士転職メリット
・救急救命士転職デメリット
目次

救急救命士の資格は消防以外では活かすことができない。
このことは平成3年の資格誕生時からずっといわれてきたことです。
しかし、近年、救急救命士の職域は少しずつですが確実に広がってきています。
2021年から救急救命士が正式に病院内で働けることになったことがそれを象徴する出来事でした。
ここでは救急救命士資格の可能性を広げる転職先を5つご紹介します。
① 病院救急救命士
② 役場救急救命士
③ 民間企業救急救命士
④ 海上保安庁・自衛隊・警察救急救命士
⑤ 消防救急救命士

救急救命士さんてみんなが困った時に助けてくれるヒーローみたいな存在だけど、
今までは消防でしか働くことができなかったんだね。

救急救命士の資格は元々消防のために作られた資格だから仕方がない部分はあるけど、
資格を活かせず辛い思いをしている仲間がたくさんいるのは残念なことだよね。
パパが民間企業の救命士になった時は消防以外の救命士はほとんどいなくて苦労したけど、
最近は消防以外の救命士も増えてきているし、今後更に働き方も多様化してくると思うよ。
病院救急救命士

病院救急救命士はまさに救急救命士界の2021年のメガトレンド。
これまで消防機関でなくては資格を活かすことができないといわれてきた救急救命士資格に新たな可能性を生み出しました。
働き方改革の一環として多忙な医師の業務のタスクシフトが課題に挙がり、救急救命士にその白羽の矢が立ち法改正に繋がったのです。
救急救命士法が施行されたのが平成3年。今回、実に30年ぶりに救急救命士法が改正され、『救急外来』まで職域が拡大されることになりました。
改正後の救急救命士法では、第2条第1項において「この法律で「救急救命処置」とは、(中略)病院若しくは診療所に搬送されるまでの間又は重度傷病者が病院若しくは診療所に到着し当該病院若しくは診療所に入院するまでの間(当該重度傷病者が入院しない場合は、病院又は診療所に到着し当該病院又は診療所に滞在している間。同条第二項及び第三項において同じ。)に、当該重度傷病者に対して行われる(中略)ものをいう。」として、「救急救命処置」の実施場所が拡大される。
厚生労働省 改正救急救命士法の施行に向けた検討について
救急救命士法の改正は令和3年5月21日に成立、10月1日に施行されました。
消防救急救命士と違い医師や看護師、その他のコメディカル資格者と連携して多様な価値観の中で働けるというのも病院救急救命士の魅力の一つです。
病院内でのメディカルコントロールの確立、厚生労働省が定める研修の受講、他の医療従事者との信頼関係構築等、課題はまだまだありますが、間違いなく資格を活かせる転職先となりました。
病院救急救命士はまさに救急救命士の新しい働き方になりそうです。
・救急救命士資格を活かして病院内(救急外来)で働ける
・消防から病院、病院から病院など転職の幅が広い
・病院によって救命士の業務内容が統一されていない
役場救急救命士

役場救急救命士は公と民を繋ぐそんな存在です。
全国には地理上、財政上の理由で消防機関を有しない自治体が31町村あります。
そこでは役場の職員が町民の救急要請に医療行為を行わず搬送のみの対応をしていましたが、医療サービス向上のため救急業務を民間企業に委託するという新しい形が生まれました。
平成27年から消防機関がない自治体に救急救命業務の民間委託を受けている「日本救急システム株式会社」が代表格です。
メディカルコントロールを構築し、資格を活かした救急救命士の新しい働き方を示してくれています。
・資格を活かして消防救急救命士同様の働き方を実現できる
・消防機関のない自治体なので町民に感謝される
・小さな自治体がメインなので大都市や地元に就職できない
民間企業救急救命士

「救急救命士の資格は消防以外では活かせない」これは救急救命士法が施行されてからずっと消防以外の救急救命士達を苦しめてきた言葉です。
しかし、近年では救急救命士の資格を活かして民間企業で活躍する救命士も増えてきています。
その代表格が警備会社である「セコム」セコムは歴史的に救急救命士の活用に意欲的な民間企業で、民間企業で救急救命士を活かす要件をすべて満たしています。
警備員は現場に最も近い場所で傷病者を救護する救命のファーストランナー。
彼らが救急医療の知識を持つ救急救命士であることは、大きな安心感を生みますね。
また東京スカイツリーなどの人が多く集まる施設や東京マラソンなどの大規模イベント救護等、確実に救急救命士の民間企業での活躍の場は広がっています。
彼らはメディカルコントロール体制を構築し、消防救命士同様に救急救命士処置を実施することができます。
今後、救急救命士界に新しい波を起こすのは彼らかも知れません。
会社員と救急救命士という2刀流で活躍するサラリーマン救急救命士も今後増えてくるでしょう。
・民間企業で働きながら救急救命士の知識・スキルを活かせる
・救急活動以外の多様なビジネススキルが身につく
・メディカルコントロール体制構築や生涯教育の充実などの課題が多い
海上保安庁・自衛隊・警察救急救命士

消防と同じ公務員である海上保安庁、自衛隊、警察でも救急救命士が活躍しています。
事故や遭難、災害などで活躍するこれらの職業には病院前救護の知識・スキルが非常に役立ちます。
海上保安庁は平成17年から「海上保安庁メディカルコントロール協議会」を立ち上げ、「特殊救難隊」や「機動救難士」として積極的に救急救命士を活用しています。
自衛隊は准看護師取得後に救急救命士とのダブルライセンスである「救難員」として被災地支援や船舶で活躍、消防から警察に転職した友人は救急救護の知識を活かして組織内の救急医療知識向上に尽力しています。
・ 海上保安庁・自衛隊・警察は資格を活かせる職場
・同じ公務員で転職後に消防で身につけた知識・スキルを発揮できる
・年齢制限や公務員試験を受ける必要がある
消防救急救命士

救急救命士の職域が広がってきたとはいえ、やはり資格を100%活かせるのは消防所属の救急救命士です。
毎年の昇給、恵まれた福利厚生、社会的信用。どれをとっても魅力的な仕事であることは間違いありません。
もし、パワハラや人間関係などの悩みで消防を離れたいと思っているなら、他の自治体への転職も一つの選択肢です。
消防学校初任教育を卒業するのにかかる経費は500万円とも言われています。自治体によっては即戦力且つその分の経費が削減できるだけでも消防出身の救急救命士を採用するメリットは大きいのです。
今は消防を一度退職しても病院や民間企業などで資格を活かして働きながら消防への再就職を目指すなど、選択肢も増えてきています。
・消防で身につけた知識・スキルを最大限に活かせる
・民間企業と比較して給料や福利厚生が安定している
・消防から消防への転職は精神的なハードルが高い

救急救命士さんていろいろな働き方があるんだね。
この転職5選をたくさんの人に知ってもらいたい!!

うん。ここ数年で一気に選択肢が広がったんだよ。
救急救命士の資格を活かしてみんながもっと自由に働ける世の中になってほしいな。

私が消防に就職した時代はまさに就職氷河期。安定感抜群の公務員は特に人気で採用倍率も高く狭き門でした。
人材の流動性は今よりもずっと少なく公務員になれた人は勝ち組で一生安泰のイメージ。
実際、消防を辞める決断をしたとき家族や友人は大反対。
それでも勇気を振り絞り一歩を踏み出したことで、消防士では得られない貴重な経験を積むことができました。
ここでは民間企業救急救命士である私が実際に経験した転職によるメリット・デメリットをお伝えします。

パパは消防士を辞めて後悔したことはないの?
今の仕事をして良かったこと悪かったことが知りたいな。

結論から言えば全然後悔してないよ!
今の職業についたからこそ経験できたことがたくさんあるからね。
ここからは転職のメリット・デメリットを解説していくよ。
転職のメリット
公務員から民間企業に転職するメリットはたくさんあります。
なぜなら消防機関と民間企業では自己の裁量権や仕事の自由度が大きく違うからです。
あなたに創造性が高くより自由な働き方を求めるのであれば、転職はあなたの人生に間違いなくプラスに働くでしょう。
それでは消防救命士から民間企業救命士に転職した場合のメリットを5つご紹介します。
・個人のスキルや実績で人事評価により適切に評価される
・企業独自の研修などによりスキルアップが見込める
・第一人者になることでモチベーションが上がる
・社内外の幅広い人脈を構築することができる
・人生のワークライフバランスが整う
スキルや実績が適切に評価される
民間企業は消防機関と比べて明確な人事評価基準を持っているところが多いです。
私の勤務先も年度初めに目標設定をして、その達成度に応じて昇給額やボーナスが決まります。
また昇格も勤続年数ではなく能力で決まるので、優秀な人間はどんどん出世することも可能。
消防士時代は基本年功序列で、成果を出したり能力が高くても昇給額は一定でしたが、現在は頑張れば頑張るほど評価されるので、モチベーション維持に役立っています。

頑張りを認めてもらえると嬉しいよね。僕も勉強や運動頑張ろっと!!

今の職場は年功序列じゃないから成果を出せばどんどん昇格するしやりがいがあるよ。
仕事をする上でのモチベーションの維持ってとっても大切だよね。
研修等でスキルアップできる
消防士時代も消防学校での専門課程がありましたが、民間企業も独自の研修体系を持っており、社会人として幅広い知識やスキルを身につけることができます。
職場内研修はもちろん、外部講師から学ぶ機会も多く、中でもコーチング研修は私の中でインパクト大。
対人関係を円滑に進めるために必要なコミュニケーションの重要性を改めて知ることができました。
研修後も身につけたスキルを実践することで上司の信頼を得て現在はコーチングを広める社内講師も務めています。
また、自分から積極的に学ぶことの重要性も痛感したので、様々なツールを利用して年間50冊を目標に読書も行っています。

コーチング研修に読書かぁ。
学校を卒業しても勉強しなきゃいけないの??

その時代その時代で求められる知識やスキルは変わっていくから毎日が勉強。
特に今は人間関係が複雑になってきているから、コーチングの知識やスキル習得をオススメするよ。
読書も偉人の叡智が2000円も出せば手に入るんだから最高の自己投資だよね!!
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社内の第一人者になれる
民間企業の救急救命士は数が少ないので、社内で唯一の資格保有者になればその分野の専門家と見なされます。
消防では指導者になるにはそれなりの年月が必要ですが、社内の第一人者になれればすぐに指導者側。
プレッシャーはありますが責任感が増し、自分から積極的に学ぶ必要があるので成長も早いです。
また自分の強みを掛け合わせることにより唯一無二の人材になることも。
私は救急救命士のスキルとプレゼン能力を高めることで社内外で救急救命技術を教える講師を務めています。

社内の第一人者か、唯一無二ってなんだかカッコイイな!!
パパは救急救命士として職場でどんな仕事をしているの?

病気や怪我をした人の対応はもちろん、一緒に働く仲間に心肺蘇生法や応急救護法を教えたり、社外の人に頼まれて講師をしてるよ。
人に教えることは最高の学びになるし、自分の強みを活かせているって感じるな。
様々な人脈を構築できる
人と違う仕事をしていること。これは紛れもなく強力な武器であり立派な名刺代わりになります。
これを上手く使うことで社内では救命分野の専門家として一目置かれるだけではなく、社外でも消防の救急救命士では出会えなかったであろうその道の第一人者と交流を持つことができました。
学会や医療系のセミナーに積極的に参加することで消防機関、医療機関との信頼構築に繋がり、民間企業に所属する救急救命士では日本ではじめてメディカルコントロール体制を構築することに繋がったのです。
人と交流する中でひらめきやシナジーが生まれお互いを高め合う。こんな関係が作れたら最高ですね。

ひらめきやシナジーってなんだかいい響き。
パパにはたくさんのお友達がいるよね。僕もお友達たくさん作りたいな!!

大変なこともあったけど、勇気を出して一歩踏み出したことでたくさんの仲間と知り合うことができた。今でもこの繋がりがパパの財産だよ。
きずなもこれからたくさんの人と出会って切磋琢磨しながら成長していってほしいな。
ワークライフバランスが整う
近年、注目されてるワークライフバランス。一般的な民間企業は日勤8時間勤務、土日祝日が休日です。
対する消防は原則24時間勤務、丸一日消防署にいることになり、この生活リズムが合わない人には大きなストレスとなります。
私が勤務していた消防は大部屋で全員で仮眠するスタイル。このような環境では十分な休息を取ることができませんでした。しかも夜間の救急出動に加え交代で通信勤務に就くので慢性的な寝不足状態に。
常にリラックスした環境で十分な睡眠時間を確保できるというのは実は大きなメリットです。
ストレスの軽減により消防士時代より怒りのコントロールも上手くできるようになった気がします。
また仕事とプライベートのメリハリがつくので、自然とワークライスバランスも整います。

24時間勤務??好きな時間に眠れないってきつそう。
パパと毎日会えないなんていやだな。

人間は最低7時間は眠らないといけないって最新の研究ではいわれているんだ。
常に緊張状態で夜中に頻繁に救急出動がある消防救命士の仕事は本当に激務。
パパもきずなと毎日お話ししたり遊んだりすることで、とってもリフレッシュできてるよ。
転職のデメリット
公務員から民間企業に転職する最大のデメリットは収入や福利厚生の低下です。
なぜなら公務員は小さな自治体であっても大企業並みの給料や様々な補助を受けられるからです。
高卒や専門学校卒の救急救命士が一流企業に転職するのは非常に難しい。
消防士時代同様の生活水準維持には転職前に付加価値の高いスキルを習得したり、副業によって収入を増やす、効率的な資産運用などが必要でしょう。
それでは消防救命士から民間企業救命士に転職した場合のデメリットを3つご紹介します。
・収入や福利厚生が充実していない
・退職金が少ない
・人間関係がドライで繋がりが薄い
福利厚生が充実していない
公務員の福利厚生は大企業並みに充実しています。
宿日直手当、妻子がいる場合は扶養手当、賃貸の住居手当、自分で家を建てた場合の住宅補助なんてすごい手当が出る自治体も。
一般的な民間企業ではここまで充実した福利厚生は望めないのが現状です。
転職を検討している場合は基本給だけではなく福利厚生がどの程度違うかを確認しましょう。
ここを補うために近年は公務員には禁止されている副業による収入アップが注目されています。

消防士さんていろんな手当が出るんだね。

給料が同じでも福利厚生の違いで年収や生活のレベルは大きく変わるよ。
退職金が少ない
老後の不安を解消する上でも退職金の額は重要です。老後2000万円問題は大きな話題になりました。
消防士なら定年まで勤めると平均で2000万円前後の退職金がもらえます。
しかし、民間企業で2000万円の退職金を得るには大企業でなくては不可能でしょう。
将来の不安を解消するには年金だけでは不十分。計画的な資産運用は避けては通れないのです。
資産運用の方法として国が推奨する「つみたてNISA」や「iDeCo」を利用することをオススメします。

おじいちゃんになった時に安心して暮らすには、たくさんお金が必要なんだね。

うん。日本人は寿命が延びてるし老後の不安は多くの人が抱えている問題。
でも、若いうちからしっかり準備すれば豊かな老後を迎えられるよ。
人間関係の深さ
人間の感じるストレスの大半は人間関係と言われています。
消防はまさに寝食を共にし同じ釜の飯を食べる仲間。プライベートを含め職場内の繋がりは非常強いです。
一方、民間企業は消防ほどの繋がりはなく、仕事とプライベートを完全に分けている人が多い印象。
消防から民間に転職すると人間関係でギャップを感じるかもしれません。
逆に消防の濃い人間関係が合わなかった人にとって民間企業のドライな人間関係は居心地が良いでしょう。

パパがお友達を大切にするのは消防士だった時の影響なの??

うん。消防士をしていた時は「絆」って言葉が大好きだったんだ。
きずなの名前も絆からきているんだよ!!
まとめ

① 病院救急救命士
② 役場救急救命士
③ 民間企業救急救命士
④ 海上保安庁・自衛隊・警察救急救命士
⑤ 消防救急救命士
救急救命士の転職5選の記事はお役に立てたでしょうか?
救急救命士は医師や看護師と同じ厚生労働大臣が認定した国家資格です。
それにもかかわらず救急救命士法が施行されて約30年間。消防でしか資格を活かすことができませんでした。
大学や専門学校でも資格を取得することができますが、今後、彼ら彼女らの3割は消防に就職できないと言われています。
せっかくの医療系国家資格である救急救命士を消防に就職できないという理由で埋もれさせるのは、本人だけではなく日本全体を考えても大きな損失。
「救急救命士をもっと自由な資格に」私がこの15年間で経験してきたことが、読者の皆さんの選択肢を少しでも増やし、道をお示しできたのなら幸いです。

救急救命士の転職5選。
もしあなたが今の職場で働くことに疑問を感じたときは是非今回の記事を思い出してください。
転職自体にはリスクがありますが、転職活動自体はノーリスク。
行動する事で新しい道がきっと開けるはずです。
救急救急救命士の資格について知りたい方は是非こちらの記事もチェックしてみてください!!

救急救命士の転職って難しいですよねー。学校の先生ってのもあるけど、救命士として働いているって言えないよねーWW
コウさん
救急救命士の職域拡大は始まったばかりなのでまだ難易度が高いですよね。
確かに学校の教師という選択肢もありますね!!