
こんにちは。民間救急救命士歴15年、元消防士のKIDです。
救急救命士ってたまに耳にするけど一体どんなお仕事なの?
消防署にいて救急車に乗っているイメージだけど??
こんな疑問を持つ方は多いと思います。救急救命士は実は今話題の資格。
それは30年ぶりに法改正により正式に病院内で働けるようになるからです。
この記事ではそんなホットな救急救命士の資格について解説します。
・救急救命士ってどんな資格なの?
・救急救命士ってどんなことができるの?
・どうやったら救急救命士になれるの?
目次
救急救命士の歴史

救急救命士は医師や看護師と同じく厚生労働大臣が認定する医療系国家資格です。
病院に搬送される前の急病人や怪我人(以下傷病者)の救命率を高めることを目的に平成3年に救急救命士法が制定され誕生しました。
傷病者の状況をしっかり観察し、医師の指示下において必要な救急救命処置を行ながら、適切な病院に安全に搬送することが主な業務になります。

救命士さんって困っている人のところに最初に駆けつけるんだね。
なんだか正義のヒーローみたい!

うん。日本でもそうだけど、アメリカでは消防士や救命士はまさにヒーロー。
住民から信頼され感謝されるやりがいのある仕事だよ。
救急救命士誕生の背景

救急業務の始まりは昭和8年に遡ります。当時は警察組織の中に消防業務が入っており、横浜の消防署にアメリカ製の救急車が配置されたことが救急業務のスタートとなったのです。
時代は進み高度経済成長期を迎え、人口増加と経済発展に伴い救急搬送件数も増加の一途をたどっていました。
当時の救急隊員には医療行為は認められておらず、目の前で苦しんでいる人々をただ病院に搬送することしかできませんでした。そんな状況を時には「運び屋」などと揶揄されることもあったそうです。
救急隊員達の苦悩を知った当時ニュースキャスターだった現神奈川県知事である黒岩祐治氏が自身の報道番組で2年にわたり取り上げ、それが世論を動かし平成3年に正式に厚生労働大臣の免許を受ける国家資格として誕生したのです。

救急救命士って日本中の人達に求められて生まれた資格なんだね。

そうだね。多くの先輩達の苦労や経験がベースになって出来上がった資格なんだよ。
救急救命士が行う処置とは

病院前救急医療の担い手である救急救命士。本来、医療行為は医師、診療の補助は看護師のみに許された業です。
医師、歯科医師、看護師等の免許を有さない者による医業(歯科医業を含む。以下同じ。)は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条その他の関係法規によって禁止されている。ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
厚生労働省 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
救急救命士は医師の指示下であることを前提に、場所の制限と処置範囲を限定することにより、医療行為である『救急救命処置』が認められています。

救急救命士さんてお医者さんの代わりに具合の悪い人を助けてあげられるんだね。

そう、病院で忙しいお医者さんや看護師さんの代わりに救急現場や救急車の中で医療処置をしてあげるのが救急救命士の役目なんだ!
救急救命士処置とは
救急救命士には2021年時点で33項目の救急救命処置が認められています。

救急救命処置は医師の具体的指示が必要な「特定行為」と包括的な指示で実施できるものに分かれています。
特定行為とは直接電話で医師に指示を仰ぐ必要がある高度な医療処置、包括的指示行為とは活動の決めごとであるプロトコルを遵守することで救急救命士の判断で実施できる処置のことです。
また救急救命士法が施行された当時には実施できなかった気管挿管や心肺停止前の輸液などのより高度な処置がこの30年間で追加されてきました。
平成15年:除細動を特定行為から除外
平成16年:気管チューブを用いた気管挿管
平成18年:エピネフリン(アドレナリン)の投与
平成21年:エピペン(自己注射型エピネフリン製剤)の使用
平成23年:ビデオ挿管用喉頭鏡を用いた気管挿管
平成26年:心停止前の輸液・血糖測定・ブドウ糖溶液の投与
資格が誕生した当初は特定行為として心肺停止傷病者に対する除細動と食道閉鎖式チューブによる気道確保、静脈路確保のための輸液のみしかできませんでした。
しかし今では低血糖に対するブドウ糖投与や出血性ショックなどに対する輸液等も実施できるようになっています。

救命士さんなら誰でもお薬や喉の奥にチューブを入れられるの?

ここに書いてある追加処置は高度な医療行為だから、講習や実習をクリアした認定の救命士さんが行う処置なんだよ。
救急救命処置を実施する場所
救急救命士法44条2項には救急救命士が救急救命処置をする場所の制限が明記されています。
救急救命士は、救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び第五十三条第二号において「救急用自動車等」という。)以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は、この限りでない。
救急救命士法44条2項より引用
これを簡単に言い表すと、現場から病院・診療所の医療機関に搬送する途上以外は救急救命処置は実施してはならないということになります。
この場所の制限があるため「救急救命士の資格は消防以外では活かすことができない」と言われてきたのです。
しかし、平成27年に総務省の「救急業務のあり方に関する検討会」で消防所属以外の救急救命士の活用が検討され、今まで資格を活かせなかった民間救急救命士にも道が開けました。
また、医師の業務のタスクシフトとして令和3年に30年ぶりに救急救命士法が改定され、救急救命処置が実施できる場所が救急外来まで拡大されます。

たくさん勉強して取った資格なのに長い間上手に使えなかったんだね。
それでもパパは諦めず努力してホントすごいなぁ。

民間の救急救命士なんて役に立たないって何度も言われたけど諦めずやってきて本当に良かったよ。
救急救命士になるには


パパのお話聞いていたら、僕も救急救命士になりたくなっちゃった。
どうやったら救急救命士になれるか教えて??

うん。実は救急救命士になるには2通りの方法があるんだ。
1つずつ解説していくからね。
救急救命士になるには2通りの方法があります。
消防士から救急救命士へ
消防士になるには高校卒業以上の学歴が必要。最短で消防士になるには高校在学中に公務員試験をパスする必要があります。
公務員試験に合格して消防士となり半年の消防学校初任課程を終了後、職場に推薦されて救急専門課程に進み救急隊員になります。
消防士として5年間、救急業務を2000時間以上経験し救急救命士養成所で6ヶ月以上の研修を受けることで国家試験の受験資格を得て、合格すると晴れて救急救命士になることができるのです。
・救急隊員として経験を積んでから資格を取得するので即現場で活躍できる。
・資格取得は職場指示になるので費用がかからない。
・職場で選抜され養成所に入校するため、必ず救急救命士になれるとは限らない。

消防士さんになるだけでも大変なのに、そこからまた学校でたくさん勉強するんだね。

うん。東京と九州に有名な研修所があるんだけど、みんな各地の養成所で勉強したり訓練して救急救命士としての必要な知識や技術を学ぶんだよ。
大学・専門学校から救急救命士へ
文部科学大臣指定の大学や専門学校で最低2年間学ぶことで救急救命士の国家試験を受験することができます。
現在、救急救命士法34条に定められている教育施設は全国に45校。(大学17校、専門学校28校)
ここで必要な座学や実技、病院実習、救急車同乗実習などをこなし国家試験をパスすると救急救命士資格を取得することができます。
・大学や専門学校で救急救命に関する知識・スキルを数年かけてじっくり学ぶことができる。
・資格取得には多額の費用がかかる。(専門学校400万円程度、私立大学700万円程度)
・資格を取得しても必ず消防士になれるとは限らない。(消防への就職率は70%程度)

学校に通いながら救命士のお勉強ができるなんてなんだか楽しそう!!
パパも専門学校に通って救急救命士になったんだよね。

勉強は大変だったけど、人を救いたいという同じ志を持った仲間と過ごした数年は最高の思い出。
今でも当時の仲間とは連絡を取り合って仲良くしてるよ!!
項目 | 消防 | 大学・専門学校 |
---|---|---|
期間 | 6ヶ月 | 2年~4年 |
費用 | 無料 | 400万円~700万円 |
平均合格率(令和3年度) | 99.3% | 大学:84.7% 専門学校:76.3% |
まとめ

・救急救命士は医師、看護師と同じ医療系の国家資格
・医療行為である救急救命処置を行いながら傷病者を救急現場から医療機関まで搬送するのが仕事
・救急救命士になるには消防士からなる方法と大学、専門学校に通う2パターンがある
救急救命士がどんな資格かおわかりいただけたでしょうか?
救急救命士資格取得者は令和3年時点で合計68,544人。
毎年、救急救命研修所で学んだ消防士や大学、専門学校生が国家試験に挑み約2500人ずつ数を増やしています。
救急救命士制度は多くの国民に求められて誕生しました。
今年、国家試験に合格した救急救命士達が資格を活かし、多くの命を救ってくれることを切に願います。

救急救命士の新しい働き方が知りたい方は是非この記事もチェックしてみてください!!
わかりやすい文章ですね。
法改正の部分だけの記事書いてくれれば、嬉しいです。
直近の1次医療機関に搬送時、受けてくれたのは内科医で、「私、挿管に自信ありません。」ってなったら、実際は、そうするの??って、今まではあったよね。
コウさん
コメントありがとうございます。
これからは確実に救命士の病院勤務者が増えるので法改正部分の記事も書いてみたいです。
今度、知り合いの病院救命士に話聞いてみます。